開発規模が大きい「SIer系」か、ベンチャーなど新興企業の「Web系」か?それぞれのメリットとデメリットについて

開発規模が大きく経営が安定している「SIer系」か、ベンチャーなど新興企業の「Web系」か?という議論をよくインターネットで目にします。Web系はSIer系のことを卑下するし、逆にSIer系はWeb系のことを卑下するので、終わりのない戦いのように見えます。

個人的には、SIerが良いかWeb系が良いかは、両方ともベクトルが大きく違う分野なので自分に合うか合わないか、「個人の選択」によるところが大きいと思います。SIer系出身の自分からすると、Web系のSIer批判は少し加熱しているように感じます。

現状を見ると、2010年あたりからWeb系にエンジニアが大量に流れていますが、それでもSIer系企業で働くエンジニアの方が大半です。おそらく数でいうと8割くらい。もともとWeb系はここ数年でできた新しい市場なので、成長産業ではあるが市場規模はまだまだ小さいです。

ここでは、SIer系、Web系で働くことのメリットとデメリットをそれぞれ紹介します。就職活動の参考になれば幸いです。

【SIer系メリット】

  1. プロジェクト規模が大きい
  2. エンジニアの単価が高い
  3. チームで取り組む
  4. 広く浅くスキルを身につけられる

【Web系メリット】

  1. マーケティング、企画から携われる
  2. 専門性が求められる世界
  3. 自由度が高い

 

「SIer系」と「Web系」の違いとは?

「SIer」とは、「システムインテグレーション(SI)」を行う業者のことを指します。

システムインテグレーションとは、システムを構築する際にユーザーの業務を把握・分析し、ユーザーの課題を解決するようなシステムの企画、構築、運用サポートなどの業務をすべて請け負うことです。IT用語辞典バイナリより

もっと平たくいうと、クライアントの業務把握し、IT技術を使って顧客の課題を解決するのが「SIer系」企業の役割です。「Web系」はエンドユーザーに対してビジネスを展開する「BtoC」なのに対し、「SIer系」は企業向けにビジネスを展開する「BtoB」です。

SIer系のメリット

メリット1:プロジェクト規模が大きい

SIerのクライアントは大手企業が多いのでプロジェクト規模は大きくなります。半年掛かるプロジェクトもあれば、規模が大きいものだと数社と合同で開発し、2年以上かけて完成するものがあります。

また、大規模プロジェクトほどメンテナンス、機能拡張があるので数年に渡って安定して収益を得ることができます。そのため、億を超えるプロジェクトもすくなくはありません。

大規模プロジェクトで上流工程で働いた経験がある人は多くないので、他のエンジニアと差別化できるスキルを持つことが出来ます。

メリット2:エンジニアの単価が高い

SIerの方がエンジニアの単価が高い傾向にあります。メーカー企業と直請けで仕事を受注すると1人辺りの単価は「80万円」を超えます。BtoCのビジネスモデルだけでこれだけ稼ぎ出せる優秀なエンジニアは世の中にどれだけいるでしょうか?

例えば、プログラマーを5人集め3ヶ月掛けてiPhoneアプリを作成しアップルストアに投稿したとします。人件費だけで「1200万円」になりますが、この経費を回収できるアイディアやプランを持つエンジニアはどれだけいるでしょうか。

メリット3:チームで取り組む

SIerのプロジェクト開発はチームで取り組みます。チームで取り組むということは役割が決まっているので、ひとりで抱え込む必要はありません。また、ポジションが上に行くほど実作業を減らすことが出来ます。

自分がいた企業では、海外の開発拠点で外国人スタッフを利用して開発していました。そのため、ある程度裁量権があるポジションまで行くと、コーディングは外国人スタッフ、面倒な資料作成や評価は日本人の新人スタッフなど、いい意味で楽をすることが出来ます。

メリット4:広く浅くスキルを身につけられる

Web系やベンチャーは狭く深い領域で特殊な専門知識を武器に働きますが、Sier系は浅く広い世界で働きます。開発環境や顧客に合わせて専門の開発部隊がいるわけではないので、クライアントから請けた仕事は基本的になんでもこなします。

10年間この業界にいましたが振り返ってみると、固定網の通信系、組み込み制御系、Windows用デスクトップアプリの開発、iPhoneやAndroidのスマホ開発、業務用のWeb開発、など様々な案件に携わらせてもらうことができました。

デメリット1:無駄な仕事が多い

SIerは基本的にクライアントありきの業務なので無駄な仕事が多いです。

特に無駄だと感じるのは、参加者が多く無駄に長い会議と大量に作成するドキュメントです。クライアントに週2回進捗報告会があり、クライアントに報告するために自社内でも進捗会議を開きます。気がつけば毎日のように会議が入ります。

もうひとつは、決まり事が多い顧客のフォーマットに合わせたテストテスト書、クライアントのために作成しても誰も読まない提出用の資料、報告会用の資料作りがあります。

クライアントからすれば、高い開発費用を払い依頼しているので当然の要求ですが、エンジニアからすると億劫だったりします。

デメリット2:技術が古く最新技術から取り残される

SIerは特定の企業が抱える課題を解決するのが仕事なので、狭い世界で働くことになります。SNSが流行しようが、流行りの技術が流れようが、クライアントが要求しなければ提供する機会はありません。

また、基本的にクライアントもSIerで働くエンジニアも保守的な人が多いです。予算やスケジュールがきっちり決まっている中で開発を行うので、新しい技術で失敗するかわからないものを試すより、すでに実績がある技術やシステムを好みます。

新しい技術をアップデートしたいエンジニアは、業務時間外でプライベートを犠牲にして学ぶ必要があります。

デメリット3:多重派遣、多重下請けなど労働集約型による問題

SIerのビジネスモデルは、エンジニアをひとつの拠点に集めてクライアント先で直接働いてもらった方が効率が良いので、「多重派遣」や「多重下請け」など労働集約型特有の問題が発生します。

多重派遣や多重下請けでエンジニアを働かせると、競争力が低下するので企業にとってもエンジニアにとっても未来はありません。

すべてのSIer企業にある問題ではないですが、技術力が低く自社開発できない企業はこの問題から逃れることはできません。

Web系のメリット

メリット1:マーケティング、企画から携われる

SIerはものづくりが基本ですが、Web系はサービスのマーケティング、企画、設計から製造まで携わることが出来ます。自分で企画して作りたいものを作りたいという方であれば、Web系の方が向いているかもしれません。

メリット2:スペシャリストに育つ

Web系は狭い領域でスペシャリストを目指す必要があります。というか、スペシャリストでなければ食べていけない世界です。

ホームページを企業向けに開発するエンジニアであれば、Webが作れますというだけではダメで、SEO対策、競合企業の調査、Webマーケティング、顧客の集客率、サイト運営のコンサル、トラフィックの分析など、深い領域の知識が必要になります。

ただWebを作れるというプログラマーは、海外の人件費が安い労働者と競合するので、生き残っていけません。

メリット3:自由度が高い

Web系エンジニアは、直接顔が見えないエンドユーザー向けにサービスを作るので、服装、髪型、勤怠など比較的自由な社風が多いです。

企業向けにシステムを開発するSIerは、信用や信頼を含めてクライアントにビジネスを提供しています。顧客がネクタイスーツを着用しているクライアントであれば、彼らに合わせる必要があります。

デメリット1:サイクルが早く安定して利益を上げられない

Web系は変化が常に競争が激しく変化が早い世界でビジネスを展開しなければなりません。ミクシィが国内シェアNo1だと思っていたら、翌年にはFacebookにあっけなく首位の座を明け渡すことになります。ゲーム会社グリーが1000万円でエンジニアを採用していると思ったら、その3年後には売上が3分の1以下になるほど変化が激しい世界です。

誰もが知るサービスを開発している企業でさえ、一寸先は闇の中です。

アイディアがなくても他社のビジネスモデルを模倣して参入してくる人もいるし、資金がある企業は資金力を利用して仕掛けてくる、完全なレッドオーシャンの世界です。

デメリット2:優秀なエンジニアしか給料が上がらない

Web系はSIerと違い完全成果主義の世界です。

人よりも綺麗なコードが書ける、人よりも効率よく働けるというだけでは給料が上がらない世界です。アイディアをビジネスに結び付け、サービスインして収益をあげられる人しか給料は上がらない世界です。利益が上げられないエンジニアは、どこの世界も一緒で長時間労働で賄うしかありません。

Web系のように当たり外れが激しい業界は、上位5%の優秀な企業やエンジニアが大きく儲けることになります。そのため、Web業界にエンジニアが増えれば増えるほど労働環境は悪くなっていきます。

デメリット3:仕事とプライベートを混同する

エンドユーザー向けのビジネスをしていると、サービスによっては土日、祝日関係なく対応する必要があります。帰った後、土日もチームで共有するチャットを確認することが求められます。そして、もしも障害が発生したら、休日に出勤してでも対応しなければなりません。

また、ベンチャーや新興企業は資金に余裕がないので、設立当初はどうしても労働条件が悪くなります。

SIer系とWeb系のまとめ

自分は10年間SIer系に属していたので、Web系に関してはネットや知り合いの情報を参考にしています。

SIer企業は近年人手不足が叫ばれているので、エンジニアの労働環境は年々改善しています。労働時間も短くなっているし、人工知能やクラウド、IoTのおかげで大手メーカーからの需要も増えているので、給料も増加傾向にあります。

どちらかというと、エンドユーザー向けに消耗戦を繰り広げているWeb系の方が大変ではないかと、個人的には思っています。Web系でも、企業向けにビジネスを模索する企業も増えています。

やはり、競争が激しい分野をトップで走り続けるのは、どこの世界も辛いというのが本音ではないでしょうか。

最近思う事ですが、BotCがやりたいならわざわざ企業に勤める必要はないのではないかと思っています。開発環境は日々進化しているので、クラウドや企業が公開しているAPIを使ったり、個人でも短期間で高機能のサービスを展開できる時代になりました。

また、SNSを利用すれば作ったものを個人で公開する環境はいくらでもあります。企業に属するという発想自体ナンセンスな時代になったのかもしれません。

SIerのような閉じた世界で生きていると、BtoCをやりたいと言うエンジニアは多いです。やりたいなら、副業でも何でもいいからまずはやってみたら?というのが正直なところです。必ずしもプログラミングに限定する必要はないし、ブログやアフィリエイトでもBtoCを体感することはできます。

そして、自分でBtoCビジネスをやってみると思う事ですが、安定して企業から定期的に開発費用が振り込まれることほどありがたいものはありません。

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